1947年のブロードウェイ・ミュージカル「ブリガドーン(Brigadoon)」はスコットランドに実在するドーン橋(Bridge of Doon)にまつわる伝説をペースに創作された。
1954年の映画化が有名で、監督は巨匠ヴィンセント・ミネリ。100年に1日だけ出現する架空の村に迷い込んだハンター(主演&振付のジーン・ケリー)と
村の美しい娘(ジーン・ケリーよりちょっと背の高いシド・チャリシー)との不思議な恋を描く。
水木しげるが「ゲゲゲの鬼太郎」などで繰り返し描いた「ブリガドーン現象」もこの伝説が元ネタ。
100年あるいは1000年に一度、複雑な気象条件がそろって出現し、妖怪が跋扈するのである。
さて、岩手県釜石市には鉄筋コンクリート製高さ48.5mの釜石大観音がある。魚を抱いて立ついわゆる魚籃観音(ぎょらんかんのん)。
釜石市内にある石応禅寺(曹洞宗)が1970年に建立したのだが、その目的は、三陸津波による犠牲者の供養である(厳密には海難事故など海での死者全般の供養も含む)。
「え?東日本大震災の41年前なのに?」と思うなかれ。1960年のチリ地震による津波など、ただ「三陸津波」と言うだけでは「いつの?」と聞き返されるほど
この地の津波は頻発している。実に30~40年に一度。「大津波」と呼ばれるカテゴリーのものは約450年、もしくは800年間隔で起きているらしい。
さて、釜石大観音が抱いているのはブリ(鰤)である。かつて岩手県はブリの漁獲量が多く、定置網はブリ漁でにぎわっていたから、というのが理由とのこと。
100年に一度のブリガドーンと800年に一度の大津波は私の脳内で「ブリ」によって結ばれ、ひとつの物語となった。
なべげんがお送りするあらたなエンターテインメント、乞ご期待!
畑澤聖悟(渡辺源四郎商店店主)